その2 春ちらし

こんにちは。ヨメです。

やっとこのところ水温がぬるみ、
痛いくらいだった水仕事が
すこし楽になってきました。
未だ鼻腔に沁み渡る寒風のなかにも、
ふと梅の香をかぎとったりして、
後先短いこの寒さを愛おしんでおこうか、
という気持ちにもなります。

そんなある日、だんなが、
敬愛する糸島のおかん 柚木さんから
こちらをいただいて帰りました。

たらららったらーん
和風ピクルスー。

そのまま食べても美味しいし、
漬け汁ごとごはんと混ぜたら
ちらし寿司もできるねんてー。

なぬ、ちらし寿司。
漬け汁を味見してみると、
だしをきかせた優しい甘酸っぱさで
たしかに寿司酢&寿司だねとしてもいけそう。
やってみましょう、ちらし寿司。

炊きたてのごはんに混ぜるだけ、で
推定じゅうぶん美味しいのですが、
せっかくなのでひと仕事。

栃木の青柳さんの新物干瓢を
干し椎茸と戻して炊き合わせます。
市販の干瓢は漂白剤で白くしてあるものが多く、
その場合、塩で揉み洗って下ゆでするなどの
手間をかけなきゃいけません。
この手間がたぶん、干瓢がふだんの食卓から
縁遠くなってしまう一因かもしれません。
でも青柳さんのは無漂白なので、
10分程度水戻ししたらそのまま煮てしまえます。
産地では、戻したらそのままお味噌汁の具に
したりもするそうです。便利!

干し椎茸の戻しは時間をかけたほうが
絶対に美味しいので、前夜から。
戻し水も煮汁に使います。
寝る前に干し椎茸を三つ四つ戻しておくのを
習慣にすると、何かと便利かもしれないですね。

いい甘辛具合に炊けました。

山下商店さんの干しひじきもあったので
メンバーに入れてみます。こちらも糸島から。

玄界灘の厳しい海流で揉まれたせいか、
しっかりしたというか、もっと言ってみれば
一本筋の通った食感のひじき。
食べれば心身ともに強くなれそうな気がします(笑)。

乾物で味の土台をしっかり築いたら、
甘めの玉子焼きと湯がいたスナップエンドウで
トッピングします。
玉子は食べごたえあるかんじにしたかったので、
今回は厚焼きをダイスカット。

干瓢&椎茸の茶、ひじきの黒、
玉子の黄、エンドウの緑、ときて
あと何か色がほしい…。
そこで思い当たったのが、
作りおきしていた紅大根の甘酢漬け。
小淵沢で有機農業を営む石井ちゃんから
直送していただいたのを、漬けたのがありました。

お酢と野菜の持つ色素が反応すると
こんなに鮮やかな紅色になります。女子色!
この子を千切り、もとい、ちょっと太めの
百切りくらいにしておきます。
それは、歯ごたえを残すためです。
包丁スキルの問題ではありません。

そうこうしてるうちにごはんが炊き上がりました。
さあ、混ぜるどー。

ごはん、干瓢、椎茸、ひじき、ピクルスを汁ごと
合わせ、しゃもじで切るように混ぜます。
私は、ちぃらしぃ〜♪(サブちゃん!)と
お約束のコマソンを小声で唄いつつ軽快に混ぜ、
コマソンを知らないナウでヤングなせがれには
うちわで扇ぐのをまかせます。

さて、トッピングでおめかしです。
焼き玉子、スナップエンドウ、紅大根の
三人娘をちらしていきます。
あぶなくキャンディーズが鳴りかけたところを
かろうじてPerfumeが脳内ループ。
ああ楽しい。

そんなこんなで

できましたー。
なんだかとっても乙女な仕上がり。
ひな祭りがひと足早く来ちゃったかんじだわ。
具材のみずみずしさや甘酸っぱさの土台にある、
どっしりとした乾物の旨味や
ふんわりとしゃっきり、異なる食感の面白さ。
全体的に酸味が柔かいので、
酸っぱいものが苦手なうちの男子たちにも好評でした。

乙女なちらしを食べながら、思いました。
ああ、そうだ。
今どき女子って、メイクやおしゃれを怠らず、
仕事も一生懸命やって、なおかつ将来を見据えて
投資物件とかも計画的に買っちゃうのね。
酸いや甘いをうまーく散りばめながら、
土台はしっかりしてるのよね。
女子を怠けちゃいかんよな。
おばちゃんもがんばるわー。

とりあえず、この春からな(笑)

ではみなさま、どうぞ美味しい人生を。

その1 おでん

こんにちは。ただいま佐藤のヨメです。

毎日こごえる寒さですね。
こう寒いと、恋しくなるのが鍋物ですね。

鍋って、食べるとあったまります。
でも、作ってるときも、あったかいですよね。
特に、おでん。
おでんは、私にとっては料理でもあり暖房でもあるんです。本気です。
ほわっと湯気が上がる程度の火加減で気長に、ことこと。
とろ火と湯気のおかげで、台所および続きの部屋が
ずっとほのかにあったかい。
換気扇強めに回しながらだと寒いですけどね。

時間のあるとき限定ですが、おうちでイチから作ってこそ、
あったかメニュー日本代表「おでん」の真骨頂発揮。
ということで、金土の2日がかりで作りました。

今回のおでんのコンセプトは、ずばり、食べ飽きないこと。
つまり、これがあればずーっと呑めると思えること(笑)。
そこで、あごだしのすっきりと澄んだ旨味をメインに
鰹や昆布などの旨味を足してみました。
使ったのは、長崎の中嶋屋さんのあごだしと混合だし。
パックで使いやすく、塩や調味料を添加していません
あえて下線を引いた理由は、また後ほど。

昆布とパックを浸水させてから火にかけて、
沸騰直前に昆布だけ取り出し、だしパックはしばらく煮出す。
上品かつ深みのあるいい香りー。おだしの色も澄んでてきれいー。

よしよしセオリー通り、と気分よくやっていたら、
腰回りをボリボリ掻きながら
キッチンに侵入してきたダンナが不意に、

「あんなー、だしパックは沸騰してから入れると
雑味のないだしがとれるねんてー」

…おいこら。はよ言え。

でも、じゅうぶんすっきり美しいおだしが無事ひけたところで。
適量のお酒と塩、薄口醤油、あとコク出しに
少量のお砂糖を入れて、ごくうすく味をつけます。
その横に、水に昆布とだしパックを投入しておいときます。

同時進行で、玉子です。
いつも新鮮な美味しさをTKGで堪能する
栃木のワタナベファームさんのうみたて有精卵ちゃんを
10個ほど惜しげもなく固ゆでにします。
殻をむくときにわかる、中からはね返してくるような
プリッとした密度と弾力、白いつやつや感。
そのまま塩ふって食べちゃいたい衝動を必死で抑えます。

練り物は、石橋蒲鉾店さんの、ちくわ、いわしつみれ、
やさい天、いか天、ごぼう天、上天を
鍋に投入する前に熱湯にくぐらせておきます。
どの子(具)もプリプリ、新鮮なお魚のいいお味が出るはず。

あと、大根と、ちくわぶと、こんにゃく、結びこんにゃく、
エリンギなどをスタンバイしておきます。

準備が整いました。いよいよ入ります。
具材をおだしをはった鍋に入れ、
弱火にかけて、ときどき見守りながらひたすら待ちます。

決して、煮立たせない。

ときどき、水出ししているおだしをかけてあげて、
鍋の上の方で顔を出している子をかわかさない。
かまいすぎず、でも適度なお手当ては大事です。

そして待つ。

がまんして待つ。

もうちょっとがまんして待つ。

途中で差すおだしは、だし素材以外の、
たとえば塩や調味料が添加されていると
おでんがどんどん塩辛く、あるいはしつこくなってしまいます。
だから、それらが添加されてない
だしパックのほうがいいと思います。(なので下線部)
市販のだしパックの中には、塩やなんちゃらエキスや
なんちゃら加水分解物などが、
しれっと添加されていることがままあるので、
よく見て選ぶのがいいです。

日も暮れて、どの子もいいかんじに
おだしとなじんできました。でもその日には食べません。
一晩休ませて、翌日いただきます。

で、翌日。
朝からめちゃくちゃ寒くなりました。
なんというおでん日和。

 

具材それぞれからの旨味が
時間をかけて渾然一体となったおだしを吸って、
大根も玉子も練り物もこんにゃくもなにもかも、
おいしい。食卓がしばし無言。

そのうちせがれが、もぐもぐしながら
ママー、あっつ、あのさ、おでんさ、あっつっ、
おいしいねええ、ずーっとたべていられるね、
とおほめの言葉をくださいました。
ママはこれがあればずーっと呑めるな(笑)。

下ごしらえを念入りにしたら、
よけいなことはせずに、目配りはしながら、
時間をかけて仕上がりを待つ。
おでん作りは、子育てみたい。

おでんにかぶりつくせがれを見ながら、
そんなことを思いました。

みなさまどうぞ美味しい人生を。